今回も、前回同様、私が力を入れている債務整理についてです。
今回は消滅時効について書きます。
「時効」という言葉は、よく聞くのではないでしょうか。
時効には、取得時効と消滅時効があるのですが、一般的に、よく聞く時効は、消滅時効の方だと思います。
借金を返さなくてよくなるのは、消滅時効のほうです。
借金問題の相談をしていると、ときどき、けっこう前の借金についての相談があります。
長年、音信不通だった業者から、突然、請求書が来て、私のところに相談にいらっしゃるんですね。
その場合、私は、「最後に返したのは、いつごろですか?」と尋ねると、
「5年以上前です。」と答える方がいます。
そうすると、消滅時効が完成している可能性がでてきます。
もし、消滅時効が完成してれば、援用することによって、残っている借金を全く返済しなくてよくなります。
「完成する」とは、時効期間が中断なく経過していること、
「援用する」とは、簡単に言えば、主張することです。
民法の消滅時効は、援用して、初めて効果が発生します。
過去の依頼者の例を紹介します。
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Aさんは、他人の会社について、合計約5000万円の連帯保証債務を背負っていたのですが、なんと、すべて消滅時効が完成しており、援用により、連帯保証債務がなくなりました。
連帯保証債務は、借金と同じですから、借金が0円になったんです。
こんなにうまくいくなんて

依頼者はもちろん、わたしもビックリしたケースでした

A
また、これは先日のことです。
Bさんは、元本だけで2社合計して約1600万円の住宅ローンを抱えていました。
遅延損害金を含めると3000万円以上の借金です。
長年、連絡がなかった業者から、突然、請求書がきたので、相談に来られたんですね。
当初は、自己破産の方針だったのですが、取り寄せた取引履歴をみてみると、自宅が競売で売られてから、長年、全く返済していなかったので、消滅時効が完成していました。
当然、援用しましたので、借金が0円になったのです

ちなみに、Bさんは、弁護士費用について法テラスを利用しておりました。
そして、うつ病で無職でしたので、法テラスへの償還(支払)も猶予されています。
自己破産しなくても、合法的に、借金を返済しなくてよくなるのが消滅時効です。
スゴイ制度です。
ところで、消滅時効の期間ですが、株式会社の業者からの借金は5年です。
銀行、クレジット会社、消費者金融は、そのほとんどが株式会社ですので、最後に返済した日から5年経っていれば、消滅時効が完成している可能性があります。
ただ、業者が、裁判所に訴え提起して判決を得るなどしていると、消滅時効の期間は10年に伸びます。
ですから、裁判所の判決があるかどうかは、非常に重要になります。
自分が判決を取られていることを知らない、又は、忘れてしまっている方は結構いらっしゃいますが、その場合は、依頼後私が調べます。
消滅時効で要注意なのが援用権の喪失です。
消滅時効に必要な5年が経過していても、消滅時効が完成していることを知らずに債務の承認をしてしまうと、消滅時効の援用ができなくなってしまうのです。
これが時効援用権の喪失です。
これは信義則(民法1条2項)を根拠にするもので、最高裁昭和41年4月20日大法廷判決で認められました。
例えば、長年音信不通だった貸金業者が、突然、自宅にやってきて、「10円でもいいから払ってくれ」と迫られて、10円払ってしまうと、せっかく完成した消滅時効の援用ができなくなってしまいます。
10円を払うだけでなく、「後で払うからちょっと待ってくれ」と回答した場合も、援用権を喪失すると思われます。
ですから、請求されたら、すぐに、弁護士に相談してください。
当初借りた会社とは別の会社、特に債権回収会社から請求されたりもしますので、業者から請求書がきたら、すぐに相談にいらしてください。
なお、株式会社でない業者の場合、例えば、信用金庫などは、消滅時効の期間は10年ですので、このあたりも相談でお話しします。
では、また。
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