みなさん、こんにちは。
今回は、労働時間の把握の話しからです。
5 労働時間の状況を客観的に把握するよう、企業に義務づけます
現行は、労働時間の把握について、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平29.1.20基発)という通達でしめしていましたが、長時間労働した労働者に対する医師による面接指導を確実に実施するためには、しっかりと企業が労働時間を把握しておく必要があります。
そこで、法律で規定することにしたのです。
その法律は、労働安全衛生法66条の8の3になります。
特に、今回の改正で、
@新たな技術、商品または役務の研究開発に係る業務に従事する労働者で時間外・休日労働が、月あたり100時間を超える者
A後述する特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の対象者で、健康管理時間が1週間当たり40時間を超えた場合のその超えた時間が月100時間を超える者
については、労働者の申し出を待つことなく、医師による面接指導を実施しなければなりません。
労働者の申し出が不要ですから、使用者のほうで、しっかりと労働時間を把握していなければなりませんね。
6 「フレックスタイム制」を拡充します
フレックスタイム制の清算期間について、現行は上限1か月とされていますが、改正により上限3か月に延長されました(労基法32条の3第1項・2項)。
また、現行は、労使協定の締結だけでよいのですが、清算期間を1か月を超え3か月以内にした場合は、所轄労基署に届け出が必要になりました(労基法32条の3第4項)。
清算期間を1か月を超え、3か月以内にした場合は、当該清算期間をその開始の日以後1か月ごとに区分した各期間ごとに各期間を平均し1週間あたり50時間を超えない範囲で労働させることができますが、この場合に、1週間あたり50時間を超えて労働させた場合は、当該月における割増賃金を支払う必要があります(労基法32条の3第2項)。
7 「高度プロフェッショナル制度」を新設します
今回の改正で、特定高度専門業務・成果型労働制が新設されました(労基法41条の2)。通称「高度プロフェッショナル制度」、略して「高プロ」ですね。
厚生労働省のリーフレットによると、
「自律的で創造的な働き方を希望する方々が、高い収入を確保しながら、メリハリのある働き方をできるよう、本人の希望に応じた自由な働き方の選択肢を用意します。」
が制度目的だそうです。
高プロの特徴としては、自由な働き方ですので、労働時間、休日、休憩、深夜労働時間の規定の適用がありません。
よって、残業代はでないですし、長時間労働して健康を害さないようにしなければなりません。
先日、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会が、高プロの適用条件などを定めた厚生労働省令案について「おおむね妥当」と答申したとのニュースがありました。
その結果、
対象業務は、金融商品の開発、金融商品のディーリング業務、アナリスト業務、コンサルタント業務、研究開発業務の5種類に決まったようです。
また、対象労働者の範囲として、労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を1年間あたりの賃金の額に換算した額が収1075万円以上に決まったようです。
高プロの導入手続について簡単に書きますと、
@労使委員会の決議と行政官庁(労基署)への届け出
A対象労働者の書面等による合意が必要です。
労使委員会の決議事項については、労基法41条の2第1項1号から10号に規定されています。
時間のあるときに見てみてください。
なお、労使委員会に関する事項、決議内容については、企画業務型裁量労働制の規定を準用しています。
企画業務型裁量労働制のときも、労使委員会でてきますもんね。
社労士試験で勉強しました。
8 「産業医・産業保健機能」を強化します
産業医は労働者の健康管理において重要な役割を担っています。その産業医をもっと活用するために、安衛法が改正されました。以下、主なものを上げます。
@事業者は産業医に対して、産業医が労働者の健康管理を適切に行うために必要な情報を提供しなければなりません(労働安全衛生法13条4項)
A事業者は、産業医の勧告を、衛生委員会又は安全衛生委員会に報告することが義務づけられました(労働安全衛生法13条6項)。
B事業者は、労働者が、産業医・産業保健スタッフに安心して健康相談できる体制の整備に努める義務が明記されました(労働安全衛生法13条の3)
C事業者は、労働者の健康情報を、労働者の健康の確保に必要な範囲で収集し、収集目的の範囲内で保管使用しなければならないこと、事業者は、労働者の健康情報を適正に管理するために必要な措置を講じることになりました(労働安全衛生法104条)
以上が、「長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現」についてでした。
次回は、もう一つのポイント、「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」に入ります。
では、また、よいお年を。
2018年12月28日
働き方改革関連法の要点3
posted by ヒラク総合法律事務所 at 19:02| 労働法